ORIYAMAKE

秋田県北秋田市・森吉山麓モロビの里に生息しています

この宿にしかないもの

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北鹿新聞 2017年11月20日 掲載記事

はて?と困った質問から

多くの人の手助けで完成したゲストハウスの内覧会を先日開催させていただきました。北鹿新聞の方も取材に来ていただき、記事にしてもらいましたよ!ありがとうございます。結構長く2時間ちょっといてくださり、色々見たり、聞いたりされていました。

その中で質問もバンバンと飛ばされてくるわけですが、一問一答形式でサクサクと答えていた中で、ウッと回答に詰まってしまう質問がありました。

それはこんな質問

『この宿で県内初とか、他ではやっていないことはありますか?』

えっ、と思った。一瞬で過去のことがよぎりました。昨年、森吉山ダムカレーをつくったときもそうだったのです。これは県内初ですか?いいえ、県内2番目です、と答えると紙面には「国直轄のダムでは初」と書かれていました。そうでした、新聞というメディアは初物びっくり大セールが大好きなんでした。正直そこまで初にこだわっていたわけではなかったので、下調べが足りなかったです。簡易宿所という営業形態も記者の人が市役所に確認したところでは、北秋田市内では初では?ということでありましたが、それが売りでもないし、そもそも正しい情報かどうかが分かりません。困った。

 

浮かんでくるものは多々あれど…

そのときに答えたものは5つ。①訪日外国人客がメインターゲットの宿は初なのではないか、②ベジタリアン向けの調味料を完備しているのは初かも、③キャッシュレスの宿は初めてかなぁ、④ネット予約だけっていうのは他にありますか?、⑤最低2泊からという縛りを設けているのは初!(だから何だっていう顔をされた汗)と答えるたびに声が小さくなっていく始末。猟師が宿主っていうのは、奥森吉の杣温泉さんや比立内に松橋旅館さんがあるし、それほどインパクトがない地域なのです。うーん。

 

ようやく現時点での納得のいく答え

それで、新聞記事では「蔀戸(しとみど)」という突き上げ式の木の扉を取り上げてもらっていますが、これは既に桂瀬の森のテラスさんにもある扉だし、自分的には納得がいっていなかったのです。

ですが、昨日深々と時季外れの大雪を眺めていて、ふと思いました。外国人客をメインにしたのも、キャッシュレスにしたのも、ネット予約だけにしたのも、最低2泊からという縛りをつくったのも、あるひとつの理由からだなと。それが県内初で、他とは違うところなんじゃないかなと。

簡潔に書くと「周りの宿からお客さんを奪わないようにしている宿」ということです。リフォーム中も一番気を遣ったことが、近くにある同じ宿泊業の人との会話。民宿ふるさとさん、リバーサイド民宿丸慶さん、民宿おださん、テレマーク山荘さん、妖精の森コテージラウルさん、森吉山荘さん、杣温泉さんと同じ森吉地区には結構な宿があります。客が減ったのは新しいゲストハウスができたせい、なんて噂が広まってしまったら、どんなにお客が来ても続けて行くことはできません。それは避けたかった。

なので、宿屋の方々には、うちは不便な宿で外国人や今きていない若者を呼ぶ宿なんですよということをかなり強調して言っていました。

でも、こそこそ逃げ回るようにしているわけではありません。堂々と戦っていこうという気概はあります。(そこのバランス大事)

 

儲けるよりも調和や共存を第一とする宿

今現在、この森吉山麓に訪れているほとんどの観光客が50歳~70歳までの高齢者です。やはり低山の魅力は若者には伝わりにくく、それが分かってくるのには年齢を重ねていくしかないというのが現況なのでしょう。紅葉シーズンにはグループで泊まる方も多いので、私がかつて森吉山荘で働いていた時は、食堂がシルバー層で埋め尽くされていました。お金も時間もある層。

それがこのままゲストハウスを開業したとして、1泊2500円という値段だけが独り歩きしてしまうと、高齢者層の溜まり場になることは目に見えていました。事実、問合せも多かったです。

そのために、様々な障害をつくりました。もちろん外国観光客の利便性や感動を高めるためのものでもありますが、それは高齢者バリアでもあります。

わざとお客さんが減るようにしかけているお店があるでしょうか。いや、最近だと増えてきてますね。予約を手紙でしか受け付けていない、岩手のランプの宿「苫屋」さんは最たるものではないでしょうか。縛れば縛るほど、ターゲットに刺さる。そういうことだと思います。

 

自分がこのような考えに至ったのも、狩猟文化に親しんできた結果ではないかと思います。狩猟自体、自分本位では決してうまくはいかないもの。山菜は5本みつけたら3本のこすことが鉄則。獲物も獲りすぎてはいなくなってしまう。共存共栄が第一。それを制度や仕組みから含めて体現しているのが、このゲストハウスだと考えてくだされば幸いです。(だから、今回はクラウドファンディングを使用しなかったというのもあるのですが、それはまた別の記事で)

 

稼ぐことが大事だと、前回の記事で書いておきながら自分では稼ぐよりも共存の方が大事という矛盾(笑)でも伝わる人には伝わるでしょう、これこそが共存共栄の道だと。これで失敗すれば、なりふり構わず、競争第一で客の奪い合いをする世界に入っていくしかありません。どうなることやら。

目指すは共存共栄の宿屋。まずは外国人や大学生の一人旅の人たちを呼んで、次回また来るときに家族を連れて来るとしたら、この宿は不便なので近くの民宿に泊まってもらうという流れが最高かなと思います。

地域を変えていくためには50年、もしかすると100年はかかるかもしれないと感じています。自分の子どもや孫の代まで続けていくことが必要なのに、目先ばかりを追いかけて、5年あるいは3年で結果にコミットしようとしている事例が多すぎることも気がかりでした。それもどうにかしたいなと。

でも、結局インタビューで「周りの宿と共存するために、わざと不便にしてお客を奪わないようにしている宿です」と言っても採用されなかっただろうな。しゅん。