ORIYAMAKE

秋田県北秋田市・森吉山麓モロビの里に生息しています

社員研修旅行誘致による観光活性化の可能性

団体旅行客から個人旅行客へシフトするのは正しいか

現在、世間一般に流布されている考え方はこうだ。

 

バブル崩壊以降、会社の慰安旅行などの団体旅行が減少し、

家族や友人・知人等と出かける個人・小グループ旅行が増加している。

また、観光情報の入手も容易になり、パッケージ商品ではなく、

個人の好みや興味・関心にあわせた行動をとることが

できるようになったため、観光地は多様性だけではなく、

個人のニーズに合致した個性的な取り組みが求められるようになっている。

 

だからといって、北秋田という観光弱者が個人向けの着地型旅行を

やろうとしても、既に手遅れである。旅行の個人化、小グループ化が

強まっているという情報が出たらその逆を行かなくてはならない。

 

北秋田がいかに観光分野で周回遅れをしているか。

同じ位置を走っているように見えても、彼らは5周先を走っている。

これから観光で生き残るためには、観光を捨てて観光で勝たなければならない。

誤解を恐れずに言わせてもらえば、有象無象の団体ですらまともに相手に

できなかった北秋田に、個別の多様なニーズに応えられるだけの力はない。

 

信仰・精神・精霊

北秋田、とりわけ阿仁・森吉地域の観光で、これからキーワードになって

いくのは森吉山麓に関する「信仰」「精神世界」「精霊」などの目に見えない

分野である。そこに、モロビやクロモジ、マルメロといった薫りの文化を

合わせることで、ブランド化を進めて行きたいと私は考えている。

 

「観光を切り口にしたまちおこし」という本でも今後の観光のあり方の議論に

おいて、旅行の形態を議論することが本質ではなく、社会の価値観、特に

経済的豊かさへの疑問とともに、労働と日常生活とレジャーとの新しい調和に

もとづく人間の生き方を実現する新しい価値観が問われている、とある。

 

森吉山麓ならではの暮らし方、生き方を見つめ直すことで

新しいライフスタイルの提案ができれば、それは立派な旅行商品となる。

 

精神性だけではお金は稼げない

しかし、スピリチュアルな分野だけでは、お金との相性も悪く

静かに自己を見つめ直してもらおうとした際の障害となる。

○○体験形式では、どうしても「さわり」だけになってしまい

本当に伝えたいことが伝わらない。本当に伝えたいこととは、

その人自身で気がつく必要があるからだ。

 

どんなに良いことでも、中途半端ではかえって悪い印象を与えてしまう。

中途半端大国、北秋田の現状。膨大な手間、少しの収入、やる気の消失。

長く続けられて、雇用も増やすためには、稼ぐことをもっと全面に

押し出しても良いのではないか。儲けなければ始まらない。

この地域に住む人の信仰心、精神性、佇まいでどうやって稼いでいくか。

観光で商売する、を真剣に考えていく。

 

2040年の北秋田市の人口は現在の約半分に

お金お金というと、必ず反発してくる層がいる。お金は不浄のものだから。

そんなことを言っていられるうちは平和な証拠である。

 

国立社会保障・人口問題研究所が発表した

『日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)』によると、

http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson13/t-page.asp

 

北秋田市に2010年は36,387人いた人口が、2040年には18,630人まで減少する。

生産年齢人口が減るということは税収が減るということでもあり、

道路、上下水道などの社会インフラのメンテナンスもままならなくなり、

次々と空き家、空き店舗が増え、集落としての機能を維持できなくなってしまう。

 

観光で商売をする人は、苦労もせずに収入を得ていると思われがちである。

農業のように、泥臭いイメージがないからだ。

しかし、観光で成功している地域の全てが泥まみれである。担当者が

駆けずり回り、ずたぼろになって、ようやくきっかけを掴んでいる。

現在の北秋田の観光は変にスマートである。異様にカッコをつけている。

それは体裁を保っているにすぎず、薄っぺらい。

 

なりふりかまわぬ観光推進の必要性。情熱をもった人材の必要性。

 

新しい価値。ハイテク登山よりもローテク登山。

北秋田における新しい観光の価値を考えたときに、森吉山麓にある

「嶽参り」という風習を紹介したい。旧暦4月8日に7日間精進潔斉の上、

参拝登山をすることだ。若者はあらかじめ麓の村に民泊し、村ごとに隊をくんで

夜明け前から氷雪を踏み山頂で御来光を仰ぐ。嶽参りをした参詣人は森吉山の

モロビ(別名アオモリトドマツ)の枝を折って持ち帰り、氏神や神棚に供えた。

モロビには魔除けの効果があるといわれ、今でも大事に持っている人がいる。

だが、この風習は現在、行われていない。

 

この、かつて行われていた参拝登山を昔のままの格好、装備で

やるというのはどうだろうか。

 

現在は山歩き、トレッキングブームということもあり、様々なウェア、靴、

便利なアイテムが揃っている。しかし、その快適な空間に包まれたままの

登山では何か足りないような気もするのだ。

ハイテク技術の結晶を身にまとうより、稲わらや毛皮を身につけて

登った方が価値があるように感じるのは私だけだろうか。

 

若い会社向けの社員研修旅行

しかも、それを体験ではなく本気で。

 

苦行をする場合、不特定多数の個人と、団体のどちらにアプローチするか。

 

ここで、冒頭で話した団体旅行客向けの観光商品という考え方である。

団体旅行の利点をフル活用したい。その場合、首都圏の若い社長がやって

いるようなIT関連企業の社員研修旅行に使ってもらえるのではないか。

創業5年未満、社員数15名前後のIT関連企業をターゲットに考えてみる。

 

コンクリート漬け、パソコン漬けの毎日を送る彼ら彼女らに

自然と向き合い、仕事と自分を振り返る機会を与えるというコンセプト。

 

最近では、農業を主とした若手社員研修も盛んになってきているようで、

仕事の原点である“農業体験”で汗をながし、自然と向き合い内省する

ことで、働くことの意義を見つめ直そう、といった教育プログラムも多い。

 

さらに、北秋田は情報が少ない。最新号のるるぶ秋田版でも1ページしか

紹介されない程の情報量である。ネットでもほとんど情報がなく、

露出が少ないのは不安と興味をかき立てる上で、プラスに働くのではないか。

また、北秋田は遠い。東京から電車、バスは1日がかりである。

北秋田の目的地にたどり着くまでの道のりも研修にしてしまえるのではないか。

到着後、バス・新幹線・飛行機を選択した理由、結果をまとめて発表する。

もちろん、嶽参りを参考にしたローテク登山も実施、と3〜7日間の

研修メニューを今後、突き詰めてみたい。

 

社員研修旅行ではなく、社員修練旅行とでも呼ばれるような

社員研修旅行の聖地を目指して行こう。

社員研修旅行誘致による観光活性化の可能性について、

これから議論を深めていけると良いのではないか。

 

「観光」を切り口にしたまちおこし―地域ビジネスの進め方

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